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「地方では出会える機会が貴重、だから大事にしたい」。求人票では伝わらない思いの具現化

株式会社ツルタ

転職・就職において、UターンやIターンという言葉は定着しつつある。とはいえ、現実を見ると東名阪や福岡など、いわゆる都市部以外での人材不足は依然として大きな課題だ。

山梨県でカー用品専門店を展開する株式会社ツルタ、同社から分社化してEC事業やWEB制作などを行う株式会社ウェブベンダーの2社では、WEBデザイナーやエンジニアといった専門的スキルを持った人材を募集するなか、Forbes JAPAN CAREERに自社のストーリーを掲載。

都市で働いていると想像しにくいが、地方の企業にとって一番の採用施策はハローワークだ。勤務地や待遇など、求人票に書いた条件でしか自社のことを伝えられないもどかしさがあるなか、採用ブランディングによってどんな効果がもたらされたのか。

ツルタおよびウェブベンダーの代表取締役を務める、堀内敏男氏に話を聞いた。

課題:都市部と比較すると人材が集まりにくく、さらに頼みの綱であるハローワークでは、社風やビジョンなど、「求人票に載せられない情報」を伝える場がない。一言で言えば、会社を魅力づけする手段がなかった

求めた人物像:クライアントに提案する制作物に多様性をもたらしてくれる、完成度の高いアウトプットが出せるWEBデザイナー

効果:採用候補者との面談時に記事を活用。自社の社風、トップや現場の思いを伝えることで、採用決定に至った

ツルタの Forbes JAPAN CAREER 掲載記事はこちら>>
地方でビジネスをするということ。それは、ヒトとしての生き様を示すこと

職種によっては、県内から採用できないという課題。どう解決するか

堀内:ツルタはカー用品専門店からスタートしています。その部署だったカー用品の通販事業がウェブベンダーとして分社化、現在はカー用品以外にも日用品などを扱うECサイトを運営しながら、Web制作の受託も行っています。

私はもともと東京でキャリアをスタートさせたのですが、Web制作の仕事を東京と地方で比較すると受注金額の相場が驚くほど違います。そのせいもあってか、制作会社の数も少なく、クリエイターもなかなか見つかりません。

一方でWeb制作のニーズ自体はあるので、以前からエンジニアとWebデザイナーの募集をしていました。

Webデザイナーについては募集当時にも3人いたのですが、リピート発注をいただくクライアントからは、デザインに革新性を求められる場合があります。

そうした時にはあえてデザイナーを代えて、多様性のあるクリエイティブを提案する必要性を感じています。東京とは制作費の相場が違うとはいえ、求められるクオリティ自体にはそれほど違いはありません。

こうしたことを踏まえると、山梨のしかも甲府から離れた街で働きたいと思っていて、かつ完成度の高いアウトプットができるクリエイターという条件は、そもそも人材不足な状況ではなかなか難しいものだったと思います。

都市部とは異なる採用事情。情報の量と質のバランスがポイント

堀内:ツルタ、ウェブベンダーで行っていた採用活動はいくつかありますが、大きくは2つです。

基本はハローワーク。

こう聞くと、とくに都市で働く方は驚くかも知れませんが、地方の中小企業にとっては最も重要な採用ツールです。

特に、実際に職員の方のもとへ通い、「こんな人材がいたら教えてほしい」とコミュニケーションをとっておくことが欠かせません。ほかの採用媒体と同じように、ただ求人票を載せておくだけでは、ハローワーク利用者の検索条件にヒットしない限り埋もれてしまいます。

それに並行して、採用情報に特化した検索エンジンのIndeedも活用していました。

Indeedには、もともとハローワークに載せた求人情報が自動で掲載されるような仕組みができています。そのため、県外からインターネットで閲覧する人のことも意識してハローワークの求人票を工夫することなども重要だと思います。

また当社の場合は、ハローワークだけではリーチできなさそうな職種、WEBデザイナーとエンジニアについてはIndeed内の広告を使って優先的に表示されるようにもしていました。

これに加えて、山梨県が運営するU・Iターンの支援サイトなども活用しています。情報の量という意味では、地方での就職希望者に対しては適しているアプローチだと思っています。

ただ同時に、情報の質という意味では、やはり求人票以上のことが語れていないとも感じていました。そんなタイミングで、「採用における認知不足の解決」や「ストーリーを通して自社のイメージを伝える」ことが適しているという Forbes JAPAN CAREER に出会い、掲載することにしました。

結果として、ハローワークと Forbes JAPAN CAREER のあわせ技で、1人の貴重な応募者を逃さずに採用することができました。採用にいたったのは、山梨出身で東京の美術短大卒の方です。ゲームの背景を描く仕事をするために、アルバイトをしながらチャンスを探していました。ただ、あるタイミングで腰を据えて仕事をしたいと思い、地元でグラフィックやデザインにかかわれる就職を考えていたようです。

実はこのとき、ハローワークにはデザイナーとしての求人票を出していたわけではなかったのですが、職員の方が「デザイン系の仕事=ウェブベンダー」と認識してくれていたようで、個別に連絡をいただきました。

最初にお会いしたときに、Forbes JAPAN CAREER のコンテンツを印刷したリーフレットを渡して、その次の面談までに見ておいてもらえるようにしました。

なぜカー用品店の一部門であったウェブベンダーがWeb制作やECの関連会社をやっているのかといったことや、会社の雰囲気など、求人票には載せることができないけど求職者にとっては大事な情報をここで伝えることができたと思います。

地方中小企業こそ、積極的な採用活動が重要
右下の女性が今回、縁あってツルタと出会い、入社を決めた

地方中小企業こそ、積極的な採用活動が重要

堀内:今回はいろいろな意味で、運が良い出会いと映るかもしれません。冒頭でもお話したとおり、そもそもクリエイターとして山梨で働きたい方が少ない中、求人票を出していない当社をハローワークに推していただいた。

とはいえ、何もしていなければこのような結果にはならなかったと思います。適切な量・質の情報を予め用意しておいたからこそ、求職者との接点ができ、会社の魅力を知ってもらうことができました。特に、地方に来て気付いたのは自社発の情報をきちんと用意している企業が少ないということです。

例えばハローワークを見た後に、今の求職者がやることは会社のウェブサイトなどを検索することです。それがなかったりすると、不安の一因にもなります。

私も「郷に入れば郷に従え」で、当初はそういった状況を踏襲していました。ですがやはり、人の入れ替わりがないと会社が風化してしまう、社員が変わらないと甘えの構造になるなと経営者として感じました。

最初はウェブベンダーで採用活動をやってうまくいったので、ツルタでも取り入れ、これまで短期の方を含めて10人以上を採用しました。短期間で辞める方もいますが、貴重な戦力として働き続けているメンバーもいるので、人を大事にしながら成果を出していくことが会社の成長につながると実感しています。

そうした出会いを形にするためにも、自社のことを伝えられる媒介者が必要です。

候補者にリーチできるようにすることはもちろん、その後もいかに自社の魅力に気づいてもらえるかがポイント。Forbes JAPAN CAREER はその役目を果たしてくれています。

縁故などではなく、初めて積極的な採用活動をするときは、優秀な人が来てくれないという不安や、どうやって自社を見せるか迷いがあるかもしれません。実体験としては、失敗しても繰り返していけばそれが洗練されていき、採用・育成もうまくいくようになっていきます。

全社にその思いを波及させるには、まずはトップがそう信じて行動することが大切です。