
知名度ゼロからのスタート。市場に後発参入した企業が、3本の記事で見せた競合優位性
いまや都市では景色の一部となりつつあるフードデリバリーの配達パートナー。その中でも一際目を惹く、空色の配達バッグが印象的なのは、Woltだ。
フィンランドから23カ国250都市以上(2022年4月現在)へ、そして日本市場を担うWolt Japan株式会社では「おもてなしデリバリー」を掲げて、フードデリバリー事業を展開している。日本においては後発ながらも、地域に根ざした配送システムの構築やユーザーや配達パートナーとのタッチポイントを重視する姿勢が受け入れられ、サービスの拡大フェーズへと移行した。
拡大を続ける同社にタレントアクイジション(人材獲得担当)として入社した平山陽恵氏が、Forbes JAPAN CAREER(以下、Forbes CAREER)の記事掲載を推進したのは入社して日が浅いタイミングのこと。彼女はなぜこのタイミングで採用マーケティングを強化するという選択肢を選んだのか。施策の背景にあった課題、そしてその後の成果について伺った。
課題:フードデリバリー事業のマーケットシェアを握っている競合他社との差別化、認知度の向上。フードデリバリーサービスに対するイメージの改善による採用強化。
求めた人物像:Woltが掲げるビジョン、世界観への共感。日本市場の立ち上げフェーズから移行し、市場の拡大を担う即戦力の人材
行なった二次活用:応募者へ面接前に必ず共有。採用候補者にスカウトメールをお送りする際のメッセージに記事を添付。社員個人のSNS発信。
効果:採用候補者全体の20%(およそ200名)、ハイクラス層*の100%が記事を読んで採用面談に臨んだ。ハイクラス層からの応募は記事公開後に増加した。
* … 大手消費財メーカーや大手コンサルファーム出身者
Wolt Japanの Forbes CAREER 掲載記事はこちら>>
なぜWolt Japanは採用マーケティングに力を入れるのか
平山:どれだけ優秀な営業がいたとしても、マーケティングが欠けていれば効率的な販促活動だとは言えません。それは採用においても同じことで、どれだけ優秀な採用担当がいたとしても、応募数を増やしていかなければ、ひたすらスカウトし続ける採用となり、効率的とは言えません。
応募を増やすために、まずはターゲット層に自社のことを知ってもらうこと。そのための採用マーケティングは重要であると考えています。応募の時点で会社のことを理解し、「どんな仕事をしたいか」「どんな目標を持ちたいか」といったイメージを持ち合わせていることで、採用面談時の話も早いですし、ミスマッチを避けられれば組織に定着しやすい。
よく知られているマーケティングファネルと採用マーケティングにおけるリクルーティングファネルのプロセスはよく似ています。しかし、決定的に違うのが「ファン」の定義です。
一般的には人や物に対する愛好者を指しますが、Woltの採用マーケティングにおけるファンとは、「この会社になら人生をかけてもいい」と思ってくれる応募者のこと。
人は人生における多くの時間を仕事に費やします。人生を楽しむためにも、幸せになれる環境でやりたい仕事ができることを伝える必要があるのです。
しかし2021年2月、私が入社して採用マーケティングを始めてすぐ、3つの課題に直面しました。まず1つが競合フードデリバリーサービスとの差別化です。すでにマーケットシェアを握っている競合他社と差別化しなければ、優秀な人の応募は望めません。
2つ目の課題が知名度です。Woltが日本に上陸したのは2020年3月と、日本のフードデリバリーサービスとしては後発だったこともあり、他社よりも知名度が低い状態でした。最後の課題が、フードデリバリーサービスに対するイメージの悪さ。デリバリースタッフのマナーを始め、メディアで悪い面ばかりが報道されてしまったことが主な要因です。
こうした課題から、私も経営陣も会社のカルチャーやどんな気持ちで働いているのか、そして今後の成長戦略を市場へ発信していかなければならないと感じ、メディアタイアップを検討し始めました。

掲載の決め手は「人」。異なる採用ターゲットに向けたメッセージを、3つの記事で
平山:世の中には数え切れないほどの媒体がある中でも、Forbes CAREERはブランディングと採用、両方取りのメディアだと思います。前職でお付き合いがあった頃から「信頼されているメディア」であることに実感を持っていたので、他社のメディア掲載との比較検討は行なわず、私がWolt Japanへ入社してすぐForbes CAREERへご相談しました。
今回のお取り組みをお願いした一番の決め手は「人」です。例えば営業担当の方が早く動いてくださったり、「3本の記事を1カ月以内に」という要望にも熱心に応えていただけて。その中でも、編集担当の方が「人事目線」でこちらの課題を深いところまで理解されていたので、記事の方向性についても安心して進めることができました。
ただ、私が入社して間もないこともあり、社内での合意形成には少し苦労しています。Woltが日本進出して日が浅いことから、グローバルの決裁者が日本の採用市場について把握しきれていないことが課題でした。そこで、メディア掲載が採用マーケティングにどのような効果をもたらすかをプレゼンし、社内の納得が得られ、予算を獲得しました。
今回、3記事セットでご依頼した理由は、対象エリアや業務内容によって採用のターゲット層がまったく異なってくるからです。それぞれの担当マネージャーのバックグラウンドや仕事への向き合い方、今どのようなミッションに取り組んでいるかという内容で、各自の個性が出るようにとご依頼しています。
Wolt Japanの Forbes CAREER 掲載記事はこちら>>
ハイクラス層の100%が「記事を読んだ」。競合のオファーを蹴って入社に至ったケースも
平山:掲載いただいた記事はマネージャーそれぞれの性格がにじみ出ている内容だと感じました。
記事の主人公として、競合他社で活躍していた人物を扱うことで、採用の競合優位性を見せつつ、資金調達金額を強調することで市場からの期待感も提示できる内容にも仕上がっています。
記事の活用方法としては、応募者へ面接前に必ず共有する弊社情報に、今回の記事を含めています。採用候補者にスカウトメールをお送りする際のメッセージに記事を添付し、社員個人のSNSでも発信しています。
Forbes CAREERには私たちで情報登録できる企業ページがあり、その内容も充実させました。弊社のブランディング戦略として「humble(謙虚に)」という考え方があります。派手に主張するのではなく、事実だけを伝えて捉え方は受け手に任せるというもの。この全体戦略から企業プロフィールにしっかり事実を記載することにしました。
こうした二次活用を含めた記事の定量的な成果として、3本の記事経由での直接応募が20名弱。ただ、他経由も含めて面接をした人全員に「Forbes CAREERの記事を読んだか」と聞くようにしていまして、全体のおよそ20%、半年で200人前後が「読んだ」と回答しました。
その他の成果として、以前は0件であったハイクラス層、具体的にはマーケティングで有名な大手消費財メーカーや大手コンサルファーム出身者からの応募が増えました。そして、それらの応募者は「必ず」Forbes CAREERの記事を読んでいましたね。
中には、競合のフードデリバリーサービスからの声がかかっていたものの、今回の記事を読んだことでそのオファーを蹴って入社いただいた方もいらっしゃいます。

タイアップ施策の成功。採用マーケティング施策をグローバルでも
平山:今後も弊社では採用におけるブランド力を高めていきたいと考えています。
日本市場での新しい事業が始まるので、その認知も広げつつ採用を強化していければと。日本進出と事業の立ち上げフェーズから、日本市場を拡大していくフェーズにシフトする中で採用ターゲットにも少しずつ変化が出てきました。
そのためにも今までとは違う切り口の社員インタビュー記事は増やしていきたいです。Woltを好きになってもらい、ここで働きたいと思っていただけるような施策を仕掛けていきます。その際にはぜひ、Forbes CAREERさんにお願いしたいところですね。
今回の施策が高評価だったことから、グローバルにおいても採用マーケティングの強化を念頭においたメディアタイアップ施策を進めていきます。ターゲットを絞り、その国にあった媒体を選んで、どのようなストーリーを発信するか。今回のForbes CAREERの施策で得られたノウハウを展開していく予定です。

日本の未来を担うスタートアップ、隠れた名企業との出会いを創出します。Forbes編集部が発掘した企業・ヒトに潜む、情熱的かつドラマティックなストーリーをお楽しみください。本サイトはこちら。