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採用基準の設計と運用|選考の質を高め、社員の定着率を向上させる

「どのような人材が欲しいか」といった採用基準を可視化することは、自社にマッチした人材を獲得するためだけでなく、採用後の定着率を高めるためにも必要不可欠な戦略だ。

そして採用活動を成功させるためには、採用基準をただ設けるだけでなく、それを面接などの採用活動にかかわるすべての社員の間で共有することも欠かせない。

そこで本記事では、企業が一般的に重視する採用基準に触れながら、採用基準の見直し方、および採用基準の設計方法を説明する。

採用した社員が一向に定着しない、期待していたほど応募者が多くないといった悩みを抱えている採用担当者には、ぜひご一読いただきたい。

そもそも、採用基準はなぜ必要か

採用基準は、面接官によって求職者の評価がばらつかないように設ける指標のことをさす。

自社にどのような人材が必要か、採用担当者が社内に共有できるクライテリア(基準)を設定し、「面接官の主観ではなく、会社が必要としている人材」を確実に採用するために必要となる。

また、その前段階にある募集要項やリファラル採用での候補者紹介など、いわゆる「出会い」の段階においても、事前にどんな人に会いたいかを定義することが企業・候補者のどちらにとってもプラスにはたらく。

このように採用基準を明確にしておくことによって、自社のニーズにマッチした人材と出会い、個人ではなく組織として選考を行い、さらには入社後のミスマッチを防ぎ、早期離職のリスクを抑えることにもつながる。

反対に明確な採用基準がないと、採用活動の各フェーズで企業として本当に雇用したい人材を取り逃がしてしまう可能性が大きくなってしまう。

新卒・中途の例から見る、「良い人材」の定義

企業にとって、どんな人が「良い人材」なのだろうか。まずは一般的に企業が求める基準について、新卒と中途の観点から考えてみたい。

新卒採用で重視する採用基準

新卒採用の場合は、仕事で今すぐに使える技術や能力よりも、一緒に働く上での「人間としての魅力」が重要視される傾向がある。

日本経済団体連合会による「2018年度新卒採用に関するアンケート調査」(同会企業会員1,376社が対象)では、「選考にあたって特に重視した点」という項目において「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」が上位3位を占める結果となった。

ここからわかることは、仕事ですぐに発揮できるスキルには、あまり大きな期待はされていないということだ。むしろ「人間関係の築き方」や「仕事への向き合い方」といった資質が採用基準となっているように思える。

中途採用で重視する採用基準

中途採用の場合は、前任者の離職にともなう補填や、新規事業を立てる際に募集がかかるケースが多いことから、会社にとっての即戦力となれる人材によりフォーカスされる。

エン・ジャパンが行った「2017年ミドル人材の採用実態調査」(n=537社)では、「直近3年以内に採用した35〜55歳までの中途求職者に求めるものは何か」という問いに対し、「即戦力」(59%)、「自社にない能力・経験」(48%)そして「マネジメント力」(36%)が上位3つを占めた。

当然の結果とも言えるかもしれないが、新卒採用では重要視されていたコミュニケーションスキルよりも、業務スキル(職歴・これまでの経歴)がより注力されてることが伺える。

ここでは新卒・中途の対比をしたが、例えば同じ中途採用でもマネージャー・非マネージャーや、職種(採用部門)、雇用形態などで基本となる採用スタンスが異なり、それによって採用基準の前提条件も変わることも覚えておこう。

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採用基準を見直す際のポイント

すでに明確な採用基準がある場合でも、必要な人材をより多く募集・獲得できるよう目指そう。例えば、次のような課題に悩んでいる企業は、選考基準を見直す必要があるかもしれない。これから紹介するいくつかのポイントを、採用基準の見直しの一助としていただきたい。

・応募数は多いが、必要としている人材が見つからない。
・採用まで至ったものの、離職率が高い。
・人事部が採用したいと思っていた候補者が、現場部門との面接で不採用になってしまう。

採用の目的は明確になっているか

まずは、なぜ採用を行なっているのか、その目的を明確にしよう。後で詳しく紹介するが、採用基準を設計するステップとして「コンピテンシー」や「人物像」の定義をする際に、目的が明確になっている必要がある。

「欠員を補填するため」なら、前任者のポジションをカバーできるスキルや能力が備わっている人、「新規事業に力を入れるため」なら、プロジェクトの立ち上げ経験がある人など、目的が明確であれば具体的に求める経験・実績なども見えやすい。

当たり前に思えることだが、なぜ目的が大切かというと、自社に上手く溶け込んでもらえそうなどの対人スキルにのみ焦点を当てて「いい人材」としてしまうと、その人が持っているスキルと現場のニーズがマッチせず、せっかく雇用してもミスマッチになりかねないからだ。

また、能力的に優秀で採用したい人材がいた場合でも、目的にフィットしていなければうまくいかないこともある。例えば候補者のスキルや能力が、採用予定の部署や業務に対してオーバースペックになっているケースが該当する。

関係者に共通認識があるか

採用の選考フローに関わる面接担当者が、全員同じ目線で採用にあたれるよう、採用基準のコンセンサスがあることも重要なポイントだ。特に採用率が極端に低いもしくは高い場合で、人材不足による現場の疲弊や離職率増加が課題になっていたら、原因はここにあるかもしれない。

採用基準の認識がズレていると、採用担当者によって観点やそれぞれの項目の評価比重がばらけてしまう。その結果、求める人材の定義が揺らぎ、当初描いたような人材が採用できないことや、想定していない人材を採用してしまうこともありうる。

こうした問題を避けるためには、採用基準に「明確に沿うべきところ」と「そうではないところ」を、採用にかかわる社員が理解できるよう、採用担当者が整理する必要がある。

たとえばコミュニケーションスキルを重視する場合、「相手の目を見てはっきりと受け答えができている」「知らないことは知らないと素直に言うことができる」など、できるだけ例示ができたり具体的に示せる採用基準を設けておくことが重要である。

一方で、全ての要素を厳格に基準化してしまうと人材の多様性がなくなるおそれもあるので、繰り返しになるが「共通事項」「各担当者の判断にゆだねる事項」といった区分ができていると理想的だ。

また、採用活動が人事ではなく各部署に委ねられている場合は、すべての部署で足並みを揃えるのが難しい。どのような採用基準で、どのような応募者が見送りとなったのかを、人事部が詳細に把握できるプロセスを設計して、細かな情報集約を心がけよう。

なお、やみくもに内定を出すことはNGだが、かといって人材を選り好みしすぎていても、理想的な人材がすぐに採用できるとは限らない。ニーズと100%合致していなくとも、多少の教育やコミュニケーションを経ることで活躍が見込まれるのであれば採用するなど、採用基準にはある程度の柔軟性があると人材不足に悩まされずにすむかもしれない。

採用基準をつくる4つの手順

次に、自社の採用基準を決めていく具体的な方法について見ていこう。自社の採用基準が曖昧、もしくは採用基準そのものがない場合は、下記で解説するステップを踏むことから始めて欲しい。

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手順1. 社内ヒアリング

最初に行うべきは、自社の採用ニーズを把握することだ。人事もしくは各部署の採用担当者が、現場でどういった人材を要望しているのかヒアリングし、リスト化しよう。

手順2. コンピテンシー項目の作成

次に、聞き取った理想的人材のコンピテンシーを項目化する。

コンピテンシーとは、「高いパフォーマンスを発揮できる行動特性や考え方」のこと。どう考えてどのように行動すれば、応募しているポジションで業績をあげられるのかを、具体化させた指標とも言える。

営業職の採用を例に考えてみよう。

前職で営業として経験のある候補者が「毎日電話をかけて、クライアントを追っていた」と積極性を露わにしたとしよう。しかしその理由が「毎日30件の電話アポイントメントがノルマだったため」と受け身の行動であった場合は、その行動に至るまでの主体的・戦略的な思考があったとはいえない。

一方で、同じ毎日30件のアウトバウンド営業をしていた候補者がいたとする。しかしその理由が前者と異なり「四半期の売上目標額〇〇円に対して10件の受注が必要だった。そのためには40回の商談が必要だと逆算し、そのアポイントを取るために毎日数を決めて電話をしていた」といった背景があったらどうだろうか。

候補者がこうした経験を語れる場合は、積極性・計画性・主体性などの点では営業職のコンピテンシーがありそうだと判断できる。

つまり、採用する人材に応募職種そのものの経験がなくても、その人の過去の思考や行動どういった考えで過去の行動に至ったのか)が定義したコンピテンシーにマッチすれば、適性はあると見込めるわけである。

このようなコンピテンシーが垣間見れる話題をうまく候補者から引き出すのも、面接官にとって欠かせないスキルだろう。

コンピテンシーは、同じ部署でもマネージャー・メンバーといった職階によって異なるため、募集ポジションごとに定義することが重要だ。

手順3. 採用したい人材像の明確化

コンピテンシーを決めたら、採用基準として具体的な行動に落とし込もう。先ほどの営業職の採用を例にすると、以下のように展開できる。

これらをどこまで詳細に定義するかは、企業の採用目的や求める業種によってさまざまだ。上で述べたように、抽象的すぎず、かつ厳格すぎないバランスを見ることで、会社として運用しやすい採用基準になる。

手順4. 採用基準の明文化

最後に、リスト化したコンピテンシーを、採用フロー毎にどのようにチェックするかを決めていく。

例えば上の表のようにまとめて文書化して配布することや、人事部署以外の社員が面接官をする前に口頭でオリエンテーションをするなど、自社の事情に合わせて運用すると良いだろう。

採用基準に関する注意事項

最後に、採用基準を設けるにあたり、NGとなる項目について確認しておこう。

厚生労働省は、不正な採用選考の防止のため、企業が選考フロー(エントリーシートや面接など)において、以下①〜⑭の項目を求職者に尋ねることを、就職差別と見なしている。

【本人に責任のない事項の把握】
① 「本籍・出生地」に関すること
② 「家族」に関すること(職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産など)
③ 「住宅状況」に関すること(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)
④ 「生活環境・家庭環境など」に関すること

【本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握】
⑤ 「宗教」に関すること
⑥ 「支持政党」に関すること
⑦ 「人生観・生活信条など」に関すること
⑧ 「尊敬する人物」に関すること
⑨ 「思想」に関すること
⑩ 「労働組合・学生運動など社会運動」に関すること
⑪ 「購読新聞・雑誌・愛読書など」に関すること

【採用選考の方法】
⑫ 「身元調査など」の実施
⑬ 「全国高等学校統一応募用紙・JIS規格の履歴書(様式例)に基づかない事項を含んだ応募書類(社用紙)」の使用
⑭ 「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断」の実施

※参考:厚生労働省|公正な採用をめざして(平成31年度版)

近年では働き方改革の後押しもあり、女性や高齢者、外国人の雇用にも拍車がかかっている。採用側にとっては何気ない疑問が、相手のプライバシーに踏み入る言動とならぬよう、採用の際は念頭に置いておきたい。

まとめ

求める人材を確実に獲得するためには、明確な採用基準の設定と、採用にかかわる全ての社員がその基準を理解していることが必要不可欠である。

どんな人材に入社してもらいたいか、その考え方や行動を判断できるコンピテンシーを社内でヒアリングして具体的にリスト化し、それに合致したエピソードを持っている優秀な人材を探していこう。

なお、自社にとって必要な人材は、外部環境の変化や部門によって絶えず変化する。一度決めた採用基準に固執しすぎず、自社の事業フェーズに合わせて適宜見直すPDCAサイクルも忘れてはならない。

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