| by Forbes JAPAN CAREER | No comments

内定前後で考察する、採用担当に適したスキルと人物像

あらゆる採用手法に挑戦しているにも関わらず、以前と比べて求人応募数が集まらなかったり、選考中や内定後に辞退されたりすることに悩んでいる企業も少なくない。

さらに採用に至ったとしても、ミスマッチにより入社後、すぐに離職されることもある。せっかく魅力的な応募者に出会えても、これでは採用に掛けた労力やコストが無駄になってしまう。人事・採用担当者の悩みは尽きない。

「面接の段階で見極めができていればミスマッチは発生しないのではないか?」
「入社前後に手厚くフォローできていれば離職を防げたのではないか?」

そう考えたときに、重要になるのが採用担当者の役割である。もしかしたら、適任の採用担当者をアサインできていないために、ミスマッチが増えている可能性もあるかもしれない。

この記事では、内定前・内定後の2つの視点から採用担当者が備えておくべきマインドセット、および適性について解説していく。

参考:採用ブランディングに関する記事一覧

そもそも採用担当者の仕事内容とは?

まずは、採用担当者の業務範囲はどの程度におよぶのかをあらためて整理してみよう。

採用担当者の仕事

採用計画の立案

最初のステップとして行うべきことが採用計画の作成だ。土台として、会社の方針や将来目標などを考慮し、年間の事業計画の1つの柱として採用を捉えることがポイントだ。

具体的には、「どの部署で」「どんな人を」「何人」採用しなければならないのかなどを定義し、経営陣や関係部署に共有する。

また、どうすれば予算内で必要な人員を獲得できるかを考え、実施する採用施策の内容やスケジュールもあわせて決める。採用手法は多様化しており、ハローワーク・求人媒体・人材紹介会社・ダイレクトリクルーティング・リファラル採用など数多くあるため、利用する採用手法を大まかに見極めておくことも重要だ。

採用施策の実行

採用計画が決まったら、計画に則って各種施策を実行していく。

求人媒体に出稿する場合は自社の求人情報を作成したり、人材紹介会社を利用する場合は求める人材の条件を伝えたりしなければならない。転職フェアのようなイベントに出向いたり、自社で説明会を開いたりすることもある。このときに使う説明用資料の作成や、採用広報を目的とした採用サイトのコンテンツ制作なども施策の中に含まれる。

選考

エントリーを募り、採用候補者の母集団が形成できたら、書類選考や面接で応募者の選考を行う。

面接では、自社の現状や将来像、応募者に期待することなど会社側の情報も開示した上で、応募者からも必要な情報を聞き出しながら採用するか否かを判断する。

採用後/入社後フォロー

内定を出したあとも採用担当者の仕事は続く。入社してもらうための「採用後のフォロー」も大切な仕事の一つだ。

定期的に内定者と連絡を取りつつ、現職との退職交渉の進捗状況や入社までのスケジュール確認を行ったり、内定者が困りごとを抱えていたら相談に乗ったりと、丁寧にコミュニケーションを取ることが求められる。

また、このフォローは入社後も欠かせない。定期的に面談の場を設けるなど、採用した人材がいつでも相談しやすい環境づくりをしなければならない。

採用活動には社内からの協力も必要

採用活動は、採用担当者だけでは成立しない。

採用を行う部門の部門長に面接へ同席してもらったり、新卒採用においてはリクルーターとして若手社員に協力を仰いだり、採用サイトへ掲載する社員インタビューの出演協力やサイトの制作を依頼したりと、社内外のさまざまな人を巻き込みながら採用活動を進めていくことが鍵となる。

採用には、社内からの協力も必要
Rawpixel.com / Shutterstock

採用活動に必須の2つの役割

採用担当者にとって特に重要なミッションとは何だろうか。

冒頭でも挙げたように、採用活動を内定前・内定後に分けて考えると、それぞれ「応募者の見極め」と「入社の動機づけ」という2つの役割が求められる。これらの役割について、詳しく解説する。

採用担当者に必要な能力

内定前:応募者の見極め

採用難の時代とはいえ、「入社してくれるなら誰でもいい」というわけにはいかない。

会社のステージ、抱えている課題、実現したい未来像などをもとに採用基準を決め、まずは書類選考で当てはまる応募者を絞っていく。そして、面談・面接を通して実際に話をしながら、応募者を見極める。

会社にとって今必要な人材を確保することは、採用担当者が担う重要な役割だ。ジャッジする際には、「応募者の本質的な性格・行動特性やポテンシャルを見抜く力」と、「自社の風土・文化に順応できるかを見極める力」が必要だといえる。

内定後:入社への動機付け

応募者の中から魅力的な人材を見出したら、入社につなげなくてはならない。せっかく内定を出しても辞退されてしまっては、採用担当者の努力が水の泡になってしまう。そうならないためにも、採用担当者は面接の場で応募者に対して自社の魅力を伝え、応募者の志望度を高める役割も担う。そういった、口説く力が必要だと言える。

採用担当に向いている人の特徴や必要な能力は?

この2つの役割を踏まえた上で、採用担当者はどのようなマインドセット、あるいは素養を持っていると望ましいのだろうか。

ここには、「それぞれに必要な能力」と「共通して必要な能力」がある。

内定前後で共通して必要な能力

まずは共通して必要な能力について見ていこう。

周囲を巻き込む力

採用担当者は社内の各部門、人材紹介会社、応募者など、社内外のあらゆる立場の人とやりとりや、調整業務が必要になる。普段から周りと積極的にコミュニケーションを取っており、周りが思わず協力したくなるような人柄であることが採用担当者として望ましいだろう。

柔軟性

採用活動にはイレギュラーがつきものだ。ときには、他部門の社員に面接官を依頼したにもかかわらず、応募者の都合が悪くなって再調整が必要になる場面も出てくるかもしれない。

そうしたことが起きても、ストレスを感じすぎることなく臨機応変に対応できる柔軟性が求められる。また、外部環境によって採用活動が左右されたり、新しい採用手法が登場したりと、採用を取り巻く環境は変化しやすい。そうした変化を敏感にキャッチし、時代に合った採用活動を行える力も必要だ。

内定前に必要な素養:冷静沈着でロジカル

内定前の段階で求められる主なスキルは次の2つだ。

冷静沈着で客観的な目、先入観なく本質を見抜く目

応募者の見た目や学歴、職歴から「きっとこんなタイプの人だろう」「あの人に似ている気がする」などと主観的に決め付けてしまっては、応募者の本質を見抜くことはできない。

また、心理学的なバイアスで自分に似た人や性格が合う人をついつい高く評価してしまいがちだが、そういったこともあってはならない。そうした思い込みやバイアスを捨てた上で応募者の能力、性格、ポテンシャルを見抜いて、会社の求める人材であるか否かを冷静に判断する力が必要だ。

説明能力

応募者の魅力を見抜くだけでなく、それを関係者に伝える能力も必須である。

採用活動の中で、部門長や役員、社長などに面接への同席を依頼するケースは多い。その場合、事前に「応募者がどんな人か」「選考や面接を通過するに至った理由や魅力」を伝えておくことでスムーズに面接が進み、採用決定へと至りやすい。

また、面接で得た情報を整理して、伝わる言葉選びや表現を選んで面接官に説明する能力は重要だ。例えば口数が多くないなど、一度会っただけでは良さが見えづらい応募者もいる。彼らが第一印象だけで面接官にジャッジされてしまわないように、本来の魅力を言語化して伝えられることも大事な役割だ。

内定後に必要な素養:情熱的で人の心を動かせる

内定後の段階では、応募者を品定めするよりも、彼らの心に火を付ける能力が求められる。具体的には以下の2つの側面がある。

人の心を動かせる情熱

面接は人と人で行うもの。それゆえ、応募者が「この採用担当者と一緒に働きたい」「この人がいる会社なら安心だろう」と感じられたときに、ぐんと志望度が高まることもある。そのため、応募者に信頼して、魅力的に思ってもらえる採用担当者であることが理想的だ。信頼してもらうためには、応募者の話を真摯に聞く姿勢が必要。また、ときには「あなたの力が必要です」「ぜひ一緒に働きましょう」など、グッと踏み込んで熱意を伝え、応募者の心を動かすことが求められる。

仕事内容や魅力への理解力、表現力

応募者から見て、仕事内容や条件を淡々と説明されるだけでは心は動かない。いろんな期待や不安を抱える応募者の心の内を想像した上で、自社の魅力や仕事のやりがい、環境や働く人の魅力などを伝えることが大切である。

生き生きと自分の言葉で語る採用担当者の姿を見て、応募者は安心することができ、入社を前向きに考えることができるようになるからだ。自分の言葉で語るためには、自社に対して愛着を持っていることはもちろん、経営者の思想や現場への理解など、会社を知り尽くしていることも大切だ。

採用担当に向いている人の特徴や必要な能力とは
Billion Photos / Shutterstock

採用課題によってもどちらが重要かは異なる

内定前後それぞれに必要な能力を挙げてみると、内定前は冷静沈着でクールなタイプ、内定後は情熱的でウエットなタイプという、正反対な気質が求められるだろう。

別の観点で考えると、企業の採用課題によっても求められるタイプが異なってくる。

ポテンシャル重視の採用をしている企業や、多数の応募者から厳選して採用をしたい企業は、内定前に応募者を見抜ける採用担当者が適任だ。一方で、内定辞退の多さが課題になっている企業は、応募者の動機付けや密なコミュニケーションに長けたタイプの採用担当者を強化した方がうまくいくといえる。

まとめ

魅力的な人材を採用して、内定辞退や採用後のミスマッチを避けるためには、ジャッジとフォローの両方が重要だ。

理想的には、ジャッジタイプとフォロータイプの採用担当者を組み合わせてチームをつくり、役割分担を行うことである。しかし、リソース上そうした配置が難しい場合や、1人で採用活動を行わなければならない場合も多い。

その際には、自社の置かれているステージや採用課題によって、どちらのタイプを抜擢するかを考えたい。また、今の体制を変えられない場合は、採用担当者自身がどちらのタイプに該当するのか、強みと弱みは何であるのかを把握した上で、足りない要素を意識的に補うことが望ましい。