
むしろ「好機」。採用活動のオンライン化は、今、優秀な人材を確保する上で最良な方法である
新型コロナウイルスの感染拡大、それに伴う外出自粛や7都府県への緊急事態宣言の発令。在宅勤務へ移行する企業が増える中、これまで対面のコミュニケーションが中心だった採用活動もオンラインへの切り替えが進んでいる。
「必要に迫られオンラインに切り替えたがベストプラクティスがわからず、やりづらい……」と感じている採用担当者も正直、少なくないのだろう。
ただ、手法が変わるだけで、採用活動の本質は変わらない。オンライン採用活動ならではのメリットもある。そう、この機会を“変化のための好機”と捉えた方が得ではないだろうか。
取り組みのヒントを得るべく、オンラインでの採用活動をよく知る先駆者に話を聞いた。学生がリモート参加できる少人数制の合同会社説明会&座談会『オンライン就活』を提供する、ガイアックスの本部長・管大輔氏である。オンラインだからこそできる工夫、オンラインならではのメリット、そして進め方のポイントとは。
オンライン採用活動は、会社の「個性」が出しやすい
新卒採用、中途採用に限らず、対面での説明会や面接の実施ができないことから、オンラインでの採用活動へ切り替えを迫られている企業が増えています。私の元にも、会社説明会の運営方法からZoomの契約プランについてまで幅広い相談が届くようになり、変化を実感しているところです。
これまで「オンラインで説明会や面接を行う企業は先進的・少数派」というイメージがあったかもしれませんが、今後は当たり前になっていくことでしょう。
とはいえ、オンラインでの採用活動は対面の採用活動に比べて「やりづらそう」「制限がある」といったイメージを抱かれている方も多いかもしれません。
けれど、意外とやりづらくないし、オンラインならではの工夫の余地があるのです。まずは、オンラインでの採用活動にまつわる誤解を解きながら、お話ししていければと思います。
社員やカルチャーを知ってもらえる機会は、むしろ作りやすい
まず、よく抱かれる一つ目の誤解は、“企業の魅力を伝えることが難しいのではないか”というもの。「実際に来社してもらった方が、オフィスの雰囲気などを感じ取ってもらいやすい」と思われがちです。
けれど、実際はオンラインの方が、複数人の社員と会話する機会を学生や転職希望者などの候補者に提供しやすく、企業の人やカルチャーを知ってもらいやすいのです。なぜなら、オンラインであれば「10分間だけZoomに入って話して」とハードルの低い依頼ができて、社員を巻き込みやすいから。
エンジニアのメンバーが、画面共有機能で開発環境を見せながら候補者と話す、といったことも可能になります。社員数人を交えた1時間程度のオンライン交流会を実施している企業もあるようです。
自社の魅力を伝えるためには、情報発信に力を入れることも大切です。学生と話していても、「移動時間がなくなって準備に掛けられる時間が増えた分、企業のホームページやSNS、採用担当者や社員のTwitterアカウントなどから情報収集をしている」という声が多い。
当然、情報発信に積極的な企業への興味が高まりやすいですよね。オンライン面接は一度に伝えられる情報が限られてしまうからこそ、多面的に情報発信をしていくことをおすすめします。

採用基準があれば、候補者の見極めは難しくない
続いて、よく抱かれる二つ目の誤解は、“候補者の見極めが難しいのではないか”というもの。対面に比べて五感で得られる情報が少なく候補者の持つ空気感が読み取りづらいため、自社に合う・合わないの見極めがしづらいと思われがちです。
けれど、オンライン面接の方が、相手の準備や気遣いが見えやすいという声も聞かれます。たとえば、「開始時間の5〜10分前にZoomに入って、カメラの角度や音響の調整をしている姿を見ると、好感が持てる」「こちらからの質問に答える際に、回答と補足情報をチャットで送ってもらえると、社内報告に役立つ」という採用担当者の声も。
こうした姿勢や気遣いが見えやすいのはオンラインならではであり、見極めに役立つ要素の一つとなります。
何より、“候補者の見極めが難しい”という意見する方にまず問いたいのは、「採用基準を言語化できていますか?」ということ。スキルとマインドの両面で採用基準を言語化できており、それらをチェックリストのような形式にまとめられている企業であれば、次の手を考え、打つことができるからです。
対面に比べて一度の面接で得られる情報量は少なくなるので、「対面の面接では4項目を判断できたところを、オンライン面接では2項目しか判断できなかった」といったことも起こるでしょう。
そのときは、面接の回数を増やしたり、該当の項目の見極めに長けた社員を次の面接担当にアサインしたり、新たな課題を用意したりすることで対応できるはず。そのため、採用基準を言語化できている企業は“候補者の見極め”に困ってはいないのです。
一方で困っているのは、これまで「なんとなく」「雰囲気で」といった、言語化できない曖昧な要素に頼って採用・不採用を判断していた企業です。「会わなければ見極められないから、いったん採用活動を止めよう」と思考停止になってしまうのではもったいない。
ぜひ、「この機会に採用基準を言語化することで、オンライン面接にシフトできるかもしれない」と考えてみてほしいです。
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距離と時間の壁を超えられる、つまり会える候補者が増える
オンラインでの採用活動ならではのメリットもあります。一番は、時間のコストが節約できること。候補者側は移動時間が不要となることで、企業研究や面接の準備により多くの時間を割くことができるようになります。一方、企業側は会場セッティングが不要となることで、情報発信に注力したり、じっくり選考したりすることが可能になるのです。
また、“時間枠に縛られづらい”というメリットもあります。対面だと、少し話して互いにアンマッチを感じたとしても、「すぐに切り上げるのは失礼だから」と1時間ダラダラと話しがちですよね。
けれどオンラインなら、むしろダラダラ話す方が失礼。採用活動の場面に限らず、「オンラインの方が会議がスピーディーに進む」という声はよく聞きます。
加えて、オンラインでの採用活動が普及すると、距離の壁に阻まれがちだった地方や海外在住の候補者が不利で無くなるため、地方から都心への就職・転職、反対に都心からのIターンやUターンなども増えていくことでしょう。

好機と捉えて取り組めば、例年より採用に成功しやすい
「オンラインでの採用活動は意外と難しくないし、メリットもある」ことは伝わったかと思います。しかし、採用担当者がフレキシブルに動いても、社長や経営陣がオンラインへのシフトになかなか対応できず、「役員面接や最終面接は対面で」とこだわり続ける場合もあります。
せっかく途中までオンラインで採用活動を進めていたのに、「最終面接はコロナが落ち着いてから」と採用プロセスを止めてしまう企業も。そうすると、“放置”されていると感じて候補者の志望度が下がってしまうかもしれません。
そして、オンラインで面接ができる別の企業を探す候補者もいることでしょう。実際、学生間でも“最終面接までオンラインで実施できる企業リスト”の情報交換が進んでいるほどです。だからこそ、オンラインに切り替えて採用活動を継続するなら、最終面接までオンラインで完結できた方がベターだと思います。
ちなみに、オンラインでの採用活動をうまく進めている企業の共通点は、採用担当者の推進力が強いこと。オンライン面接を渋る社長に対しては、「自分も同席しますので」と提案し、最終面接でのファシリテートを買って出る。
採用基準を明確に言語化して、「面接でどの基準がクリアになれば内定を出せるのか」をしっかりと定義しておく。「例年は早々と他社の内定を得ていて、接点を持つことができていなかった優秀な学生を採用できるチャンスです」と、今スピーディーに採用活動に取り組むべきメリットを経営陣に伝える。こうした説得や推進が非常に上手なんです。
彼らは、今のこの状況を大きなチャンスだと捉えています。オンラインだから採用活動が制限されるという意識はなく、オンラインだからこそ工夫できることもたくさんあるはずと、トライを積み重ねながら採用活動を前に進めようとしているのです。
ここで採用フローを整備し、オンラインでの採用活動にシフトできた企業は、採用市場における知名度や好感度も上がるはず。そして、今後数年先まで採用におけるアドバンテージを得られるのではないかと思います。せっかくなら、この機会を好機と捉えて、オンラインでの採用活動に取り組んでいきましょう。

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