| by Forbes CAREER 編集部

採用目的のオウンドメディア|メリット・デメリット、厳選事例を紹介

従来、企業の採用手法は主に「求人媒体」「転職エージェント」が中心であったが、2000年代に入ってから、新たに「オウンドメディア」を活用する企業が増えている。

オウンドメディアで継続的に潜在的な社員候補となる人たちと接点を持ち、彼らをナーチャリング(育成、啓蒙)することで、自社にマッチする求職者を獲得するという施策だ。

この記事では、採用オウンドメディアの概要を説明した上で、実際に採用オウンドメディアを活用している企業の成功事例と、そこから読み解ける採用オウンドメディアのメリットや注意点について解説していく。

参考:採用ブランディングに関する記事一覧

採用オウンドメディアとは

企業が自前で運用するWebメディアを「オウンドメディア」というが、その中でも特に採用活動を目的としたものを「採用オウンドメディア」と定義する。

新卒採用などでよく制作される、いわゆる採用サイトも自前運用という意味ではオウンドメディアの1つではあるが、「コンテンツを常時更新」し、「継続的に読者とつながる」という運用のスタンスが異なる。

採用オウンドメディアは、求人媒体とは異なり、サイトの全コンテンツを自社で設計・運用できるので、自社の強みがある。

採用オウンドメディアで掲載すべき5つの要素

ユーザーに対して、次の情報がわかるようなコンテンツを掲載しておくことが望ましい。もちろん1つのページでこれらを網羅する必要はないので、それぞれにある程度の情報量をもたせておくと企業理解につなげられる。

広報・宣伝的な役割を主な目的にしたオウンドメディアとの違いとして、採用をゴールとしたコンテンツ群を設計することが重要になる。

  1. 自社のミッション、ビジョン、バリュー
  2. 社員のインタビュー
  3. 社内制度や福利厚生
  4. イベント情報
  5. エントリー時期・方法

自社のミッション、ビジョン、バリュー

ミッションとは、自社の「社会的使命や存在意義」を示すものである。ビジョンはミッション達成の先に描く、「組織や社会の理想像」を明文化したものだ。バリューは企業の「価値観」とも言い換えられる。

具体的なコンテンツのアイデアとしては、経営理念や組織基盤となっている考え方などについて、トップインタビューなどの形で紹介することが挙げられる。自社の中長期的な労働環境や経営状態の見通しも含めて記載しておくと、入社した後のイメージを持ってもらいやすい。

社員のインタビュー

実際に働いている社員のリアルな声は、求職者が具体的な入社後の未来像を描けるため、特多くの採用オウンドメディアでコンテンツになっている。年代別、職種別などに分けて、複数コンテンツがあると良いだろう。

特に、最近では前述のミッション、ビジョン、バリューを体現している社員を取り上げたり、象徴的なエピソードを紹介することも多い。

社内制度や福利厚生

働き方改革の後押しもあり、リモートワークや時短勤務、副業など、就労形態が多様化している昨今、より多くの求職者にリーチするためには、よりさまざまな制度が設けられていることが大きなアピールポイントになる。

とはいえ、単に箇条書きで項目だけ羅列するだけでは、制度の良し悪しや背景が伝わりづらい。そのため、コンテンツにする場合は人事担当者に制度設計の背景を語ってもらったり、制度を活用して理想的な働き方を実現している社員に話を聞いたり、ストーリーとして制度を紹介するといったアイデアがある。

イベント・企業セミナー情報

オウンドメディアを訪れてくれたユーザーたちに、より自社のことを知ってもらえるよう、イベントやセミナーの情報も記載すべきだ。「エントリーへの意思が固まりきっていないが興味はある」という人と、より強い接点を持てる機会にもなる。

エントリー時期・方法

興味関心をもったユーザーがすぐに応募できるよう、エントリー時期やその方法については、目に触れやすい場所に記載しておこう。記事コンテンツの場合は、本文末のCTA(Call To Action、ユーザーの行動喚起を促すバナーやテキスト)として「応募ボタン」を設置したり、説明会の案内をするといった選択肢が考えられる。

採用を目的にしたオウンドメディアの成功事例

自社メディアの運用には、後述するが想像よりも労力がかかる。

一方で、次に紹介する企業のように、求職者の役に立つコンテンツを継続的に発信できれば、採用ブランディングの柱になるポテンシャルがあり、求人広告やエージェントに並ぶ武器にもなるだろう。

ここでは、情報発信として成功しているいくつか代表的な企業の例を紹介する。

メルカン|働きやすい会社としてのブランティングを実現

メルカリの採用オウンドメディア メルカン
mercan公式サイトより

mercan(メルカン)は、2016年5月の創刊以降、「メルカリの人を伝える」をコンセプトに運用されているオウンドメディアである。メルカリの社内文化や実際に働く人を伝えるため、メルカリグループのメンバー全員が発信できるようになっている。

「新卒」「デザイナー」「インターン」など多様なカテゴリーから自分に合ったストーリーを検索できるようになっており、記事末尾にはCTAとして、必ず関連する求人情報と、SNS拡散ボタンが掲載されている。

少しでも興味を持ったら読み手が行動に移せるユーザービリティにすることで、多くのまだ見ぬ求職者に訴求できていると考えられる。

任天堂|ポップで等身大の記事コンテンツでリード最大化

任天堂の採用オウンドメディア 仕事を読み解くキーワード
任天堂公式サイトより

任天堂の採用オウンドメディアは、採用オウンドメディアとしてだけではなく、「読み物」としてもユーザーとの自然なコミュニケーションを構築している好例だ。

中でも「仕事を読み解くキーワード」では、同社の有名ゲームキャラクターをアイキャッチ画像に、下記のカテゴリー毎に社員メンバーによってさまざまな仕事紹介がされている。

・理工系(ソフト)
・理工系(ハード)
・デザイン系
・サウンド系
・制作企画系
・事務系

担当商品のプロジェクト背景や具体的な仕事内容だけでなく、幅広いユーザーにとって馴染みのゲームやキャラクターの制作裏話が垣間見れる面白さが、採用オウンドメディアという垣根を超えて愛される大きな理由だろう。

その他にも、The Bake MagazineLINE HR BLOGUB Journalなど、採用オウンドメディアで成果を収めている企業は枚挙にいとまがない。

これらの例は前章「採用オウンドメディアで掲載すべきコンテンツ」の項目をすべて羅列していないかもしれないが、コンテンツあるいはサイト全体の構成を通して、自社の“ありのまま”を発信することができている。

採用オウンドメディアのお手本として、ぜひ実際にサイトを訪れてみてほしい。

採用活動にオウンドメディアを活用するメリット

採用メディアの活用方法や成果指標は企業によってさまざまだが、上記の成功事例から共通して伺えるメリットがいくつか考えられる。

自由度の高い情報発信ができる

第一に、フォーマットに縛られない自由な情報発信ができる点だ。

例えば求人サイトでは、記事ページのデザインや掲載できる写真や文字の量など、大まかなフォーマットが決まっており、サイトデザインのカスタマイズに制限がある。

一方、自社のオウンドメディアであれば、取材形式のインタビュー記事や部署紹介といったコンテンツそのものを自由に企画・配信することができる。たとえば動画などもイメージに合った掲載ができる。

結果、採用広告では伝えきれない企業のリアルな情報発信が採用ブランディングに繋がり、自ずと自社のカルチャーにフィットする人材を獲得することができるメリットがある。

広告費の削減につながる

求職者との接点に媒体社や人材会社などを介さないため、広告費を削減できるのが2つ目のメリットだ。

例えばSEOを踏まえたサイトや各ページの設計がされていれば、検索流入によってメディアを知るユーザーにも出会えるだろう。また、インタビュー記事や働き方などの普遍的なテーマは、SNS上での二次拡散もされやすく、広告に頼らずとも多くの人の目に触れる可能性もある。

採用にオウンドメディアを活用すると、自由度の高い情報発信ができ、広告費の削減にもつながる
Bits and Splits / stock.adobe.com

採用活動にオウンドメディアを活用する際の心構え

上に紹介した例のように、採用オウンドメディアは成功すれば大きな成果が待っている。しかし、運用という点でのコストについては、事前に知っておくと良いだろう。

より具体的に注意点について見ていこう。

コンテンツを更新し続ける必要がある

どのようなポジションで採用が継続中かを示すためにも、オウンドメディアのコンテンツは更新し続けなくてはならない。年に1〜2回(春・秋)程度のタイミングが山場である新卒採用だけでなく、入社時期を問わない中途採用を対象としているのであれば、特に情報の新しさが求められる。

「〇〇年度採用」といった年度毎に作り替えるページではなく、情報がストックされていくオウンドメディアの場合は、情報更新が止まっていることがマイナスイメージにもつながる。

とはいえ、無理に毎日・毎週と更新する必要はない。実際にサイボウズ式やメルカンも、現在の更新頻度は2週間〜1ヶ月程度に1記事といったペースだ。ただし、記事コンテンツを公開せずとも、水面下では先を見据えたテーマの企画や執筆が進んでおり、制作活動は常に動いていることは確かだろう。

コンテンツはユーザーが3回接触して初めて認識してくれるという「3回接触の法則」がある。それが100%正しいと言わないにしろ、読み手から自社を想起してもらえるようになるまで根気強く情報発信をする必要がある。

他部門と連携する必要がある

採用オウンドメディアの運用には、コンテンツ制作の際に他部署との連携が欠かせない。

例えば社員インタビューのようなコンテンツでは、取材の聞き手・ライティングを採用担当のみで回す場合、時間的なコストが大きい。また、部署や役職にかかわらず多様なチームメンバーがそれぞれの声で発信するからこそ、“その会社らしさ”が伝わる。そのため、運用チームとして部署横断のプロジェクトにするのも一つだ。

また、サイトを新たに制作する場合にも、社内の情報システム部門など、関係部署への協力を仰ぐことが必要になる。厳密にはオウンドメディアとは呼べないが、noteなどのようなプラットフォームを活用すると運用のリソースを軽減できる。

SEOも意識するほうが結果につながりやすい

採用オウンドメディアはユーザーに認知してもらわなければ効果を発揮できないため、まずは検索で多くのサイト流入数を獲得できるよう、SEO対策は怠らない方が良いだろう。

一例だが、たとえば次のような点については、知っておくだけでも大きな差になる。

・新しいサイトは検索エンジンに評価されるまで時間がかかるので、サイトの置き場は企業サイトの中にする(カテゴリーを追加する)
・ソーシャルメディアや他社のサイトなど、自社サイト以外でコンテンツが紹介されるような企画を立てる
・記事はジャンルごとにカテゴリー分けし、URLの構造が樹形図状になるように構成する
・離脱数が多くならないよう、1つのページの中にも見出しや写真などを入れ、情報の整理をする

採用オウンドメディアの成功には継続的な改善が欠かせない

オウンドメディアを採用活動の手法とすることは、自社のブランディングや採用率向上などさまざまなメリットがある。スマートフォンの普及によって、いろいろな場所から情報を得られる時代になったので、求人媒体に求人を掲載して応募を待つだけ、という考え方はもはや終わりを迎えつつあると言っても過言ではない。

一方で、採用オウンドメディアは「運用するもの」という意識が大切だ。多くの人にリーチし、自社の想起を獲得するまでには、地道な作業、多くの社内メンバーを巻き込んだ企画や情報発信も必要になる。

こうした地道な努力が欠かせないことも念頭に置いておけば、必ずや成果を得られる採用オウンドメディアを「育て上げる」ことができるだろう。

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