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オンライン前提の施策は、オフラインでも生きる──今、新たに見直す社員の目標設定とマネジメント

新型コロナウイルス流行の終息が見え始めてきた。

コロナ禍でも企業は採用活動を行ない、例年以上に不安と期待でいっぱいの中、2021年度の新入社員もやってきた。

2020年度はまさにコロナ禍、多くの企業が新入社員の受け入れに混乱したのではないだろうか。そこで今回、改めてリモート下における受け入れ、そしてマネジメントの在り方について模索してみたいと思う。

参考:採用ブランディングに関する記事一覧

テレワークが当たり前、という認識を持つ


リクルートマネジメントソリューションズが行なった調査(※1)によると「オンラインでの新入社員教育の実施を検討している」が67.2%、「配属後テレワークが中心の可能性がある」が33.5%であることがわかった。

オンラインでの新入社員教育を検討している企業は67.2%、配属後テレワークが中心の可能性がある企業は33.5%にものぼる
参照:リクルートマネジメントソリューションズ
人事306名に聞く、With/Afterコロナ禍の人事施策はどのように変わるのか

事実、コロナの感染拡大状況により、テレワークの頻度が高くなり、テレワーク中心の教育を余儀なくされている。
教育担当者やマネジメント層はオンラインを想定した新入社員教育のノウハウを知っておくと良いだろう。

リモート下こそ、「段階的な目標設定」で新人の背中を押す


私が働いているknit(ニット)という会社は、様々な企業や組織の業務をオンラインで代行するサービスを展開しており、世界33カ国400人のリモートワーカーが在籍している。

五反田にオフィスはあるものの、出社する社員は5~6人程度で、出社時間の決まりもない。また、事業はオンラインで完結するため、創業時からフルリモートを前提としたマネジメントを行なっている。リモートワークは場所や時間に拘束されない、柔軟な働き方ができるという魅力がある。

しかし創業当初より、リモートワークでのオンラインコミュニケーションは「相手の顔がリアルタイムで見えないため、心理面や理解度など情報のキャッチが難しい」という課題が認識されていた。

特に、新入社員教育ではオンライン上でゼロから関係性を醸成するため、通常のオンラインコミュニケーションよりも注意深く行なう必要がある。

このことから、「オンラインでの新入社員研修」が効果的なものになるよう、模索しながら作りあげてきた。

まず忘れてはならないのは、「人は急に成長しない。段階的に成長していく生き物である」ということ。

これを考慮して、それぞれのフェーズで何を行なう必要があるのか、どのようにコミュニケーションを設計していくのかを綿密に企画していく必要がある。

もしも「これができて当たり前」というメッセージを与える形で研修を行なえば、新入社員は強いプレッシャーを感じ、「この会社でこのまま働き続けることができないかもしれない」とモチベーションの低下を引き起こす可能性がある。

この積み重ねが、新人社員の離職につながりかねない。

Vadym Pastukh / Shutterstock.com

これは決して新入社員に高い目標を与えるなということではなく、「目標の見せ方」にポイントがある。

「最終的にはここまでできるようになってほしい」という目標を伝えた上で、「1カ月間でここまで達成してほしい」「次の1カ月はここまで」というように段階を踏み、直近の目標をセットで伝えることが大切だ。

たとえば、山登り未経験者がいきなり「エベレストの頂上まで登れ」と言われたら躊躇する。「まずは高尾山を、そのあとは色んな山を登りつつ、富士山の頂上を目指そう」と言われたら少しは実現できる気がしてくるものだ。

このような目標の立て方により、最終的な目標に、段階を踏んでチャレンジすることができる。

当社では「入社から2カ月で新メンバーが独力で業務を獲得し、自律的に働ける」、という状態を「オンボーディングに乗っている」と定義している。その上でフェーズごとに区切って新メンバーが業務の軌道に乗るようにサポートをしている。

入社後のフェーズ別、目標とその取り組みの例
knit社提供の図をもとに、Forbes JAPAN CAREERにて作成

管理職・育成担当が持つべき2つの心構え


富士通が2400人のSEを対象に行なった調査(※2)を見てみよう。

高い成果を上げているマネージャーの4人に3人が部下にタスクを細かく指示して管理する「上意下達型」ではなく、仕事を任せることで自ら考えるように促し、力を引き出して育てる「コーチング型」であるという分析結果が出た。

この調査結果の通り、私はテレワークを行なう上で必要な管理職・育成担当の心構えは2つあると考えている。特に新入社員の育成においては、この心構えがないと新入社員が会社に馴染みにくかったり、突然の音信不通になってしまうということもあり得る。

1. 「仕事をしている」という性善説をもつ

テレワークになり、「本人任せだと、仕事をしているのか不安になる」という声をマネジメント層からよく聞く。しかし、仕事をサボりがちな人は、オフィスでも家でもサボるのだ。そのため、まずは「仕事をしている」と信じよう。

むしろテレワークは長時間労働の危険があるということを念頭に置かなければならない。

例えば、移動時間というオンとオフの切り替えの時間がなくなったり、夜中まで誰にも止められずに働けるため、真面目なメンバーが働き過ぎで体調・メンタルを壊しやすいというケースも多い。

育成担当者は労働時間にも着目し、新入社員のケアをしよう。特に新入社員は「頑張らないと!」という意識が強いため、気にかけていくことが大切だ。

2. メンバーを褒めて、信頼関係を構築する

オフィスに出社して顔を合わせていたら、表情から心情が伝わるし、飲みニケーションで仕事以外の話をしたり、腹を割って話すことで心理的な距離が近づくこともあるだろうが、オンラインではそれが難しい。

そのため、育成担当者やマネージャーからメンバーへ歩み寄ることが大切だ。メンバーを観察し、チャットなどで「昨日の商談、よくできていたね」「連絡してくれた情報、すごく勉強になった」など、「1日、1褒め」を心掛けて、オフィス以上に認める姿勢を持とう。

リモートワーク環境で自律的な仕事を促すためには、「信頼関係を構築して、メンバーのやる気を生み出す」ことが重要なポイントだ。

まとめ


最後に。新入社員には、早く仕事を覚えて戦力になって欲しい、と期待する気持ちから教育を急いでしまいがちではないだろうか。

しかし、自分たちの新入社員時代を思い出してほしい。人の育成には時間がかかるのだ。1つずつコツコツと知識と経験を積み上げていき、人に教えてもらいながら、自分自身でも学び続ける姿勢を見守ろう。

そして、定期的に対面で話す機会を設けつつ、軌道に乗ってきたらテレワーク中心型に移行するなど、オフラインとオンラインのハイブリッド型で新入社員の教育を進めていけたら良いと思う。


※1 リクルートマネジメントソリューションズ
人事306名に聞く、With/Afterコロナ禍の人事施策はどのように変わるのか

※2 DIAMOND online
富士通が「優秀なマネジャー像」を解明!2400人の人事データ調査

企業のブランディングや採用活動に役立つ記事は こちら>


小澤美佳(こざわ みか)

寄稿者プロフィール◎小澤美佳(こざわ みか)

新卒でリクルート入社。採用領域の営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で講演実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。中米ベリーズへ単身移住・起業。その後、ニットに入社し、営業・人事を経て、広報。オンラインファシリテーターとしても活動中。